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個人における生命保険金等の税務は、その保険料を支払った人、その保険金を受け取った人が異なるごとに課税関係が変わってきます。
例えば、被保険者の死亡により死亡一時金を受け取る場合、その保険料の負担者が被相続人ならば相続税、受取人なら所得税(一時所得)、被相続人でもなく受取人でもない第3者であれば贈与税が保険受取人に課税されることとなります。
ここで問題となるのが、保険料の負担者=契約者とは限らないということです。契約書上には被保険者、保険契約者、保険金受取人は記されていますが、肝心の保険料負担者については何も明記されておりません。厳密にいうと保険の契約者が誰であるかは、課税上は影響のないことで、それよりも実際に誰がその保険料を支払ったかという「真実の保険料負担者」を把握することが求められます。
本来は年末調整などでも同じことが言えまして国税庁から毎年配布される「年末調整のしかた」にもその辺については「生命保険料控除は所得者本人が支払ったものに限る」とはっきり明記されておりますが、実務の現場ではすべての給与所得者の年末調整にあたりそこまで把握しきれないのが現状であり、恐らく課税庁側もそこまで要求していないのかも知れません。
だが、最終的にその保険料を受け取る段階、いわゆる出口課税にあたっては「真実の保険料負担者」が誰なのかを通帳の動きなどからしっかりと見極める作業が必要となります。
保険の負担者、受取人、契約者すべて中途にて変更することもあり得ることから、相続開始時点においての保険の被保険者、受取人、契約者を表面の契約書上形式的に追っていると例えば負担者が途中で受取人から被保険者へ変更していた場合、その死亡一時金の全額を相続財産にしてしまうといったミスが起こる可能性もあります。
過去の裁決事例などを見ても真実の保険料の負担者は一体誰なのか、それによってその保険の一時金は相続人の相続財産なのか一時所得なのかを争われた事例は多く、今でもこのような争いごとは多く見かけます。
これは、毎年の保険料相当額を贈与によって支払った場合も注意が必要となります。昭和58年9月国税庁事務連絡によると保険料の支払い能力がない未成年者等であってもその保険料の支払資金を贈与された場合、保険料負担者として認めるとされました。
ただし、毎年の贈与契約書を作成しているとか、その保険についての確定申告、年末調整等による生命保険料控除が当該贈与との辻褄が合っているとか、当該贈与の事実に即した贈与税申告書は提出されているかといった贈与事実の心証を得られるものでないと認められないこともあるので注意が必要です。過去の裁決事例でも親権者の口座より直接保険料が支払われたケースについては、その贈与が認められなかったといった事例もあり、贈与したい保険料について通帳にしっかり跡を残すといった贈与したという「はっきりとした意思」を課税庁側へのアピールとしてクドいくらいに意図的に殊更な行動をとるべきなのでしょう。
埼玉本部 菅 琢嗣