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竹中平蔵氏 講演(その2)

震度6でもビクともしない建物と世界に誇れる日本の情報網

東京は震度5でした。、震度6となると人間が成人男性が立って居られないという揺れです。東京は震度5強だったと聞いていますけれども、 その揺れで東京の建物は殆ど崩れなかったのです。もちろん一部あそこの青年階の天井が落ちたとか、川崎の所だの当時の天井が落ちたという、いろんな物があるけれども、殆ど建物がビクともしていない。
これは私達にとって、当たり前の事ですけれども、世界の基準からみると、すごい事です。仙台は震度6だった。それでも仙台の建物は、もちろん、傷んだ建物、崩れた建物ありますけれども、ほとんど、仙台の建物、傷ついていません。いわゆる、地震対策、防災の為の建築基準の積み重ねというのは正しかったんです。

地震から、なんと3分後にあの地域に全体に津波警報がありました。 こんな国は世界にはありません。2万5千人の方が死者・行方不明になったというのは痛恨の傷みではありますけれども、それでも、もっと多くの方がこの津波警報の御蔭で山に逃げる事が出来ました。津波警報、実はあのマグネチュード9.0でありましたけれども、2004年12月ににマグネチュード9.1のスマトラ沖の地震というのが起こっている。皆さん起こったのを覚えておられると思います。ちょうど、小泉内閣の時でした。
ほぼ、同じ規模の地震でインドネシアでは、22万人亡くなりました。日本で2万5千人死者、行方不明出したというのは、痛恨の極みではあるけれども、やはり津波警報とかいうのは、ちゃんと作動していたという事です。もちろん、変えなければいけない事はたくさんあるでしょう。しかし、今までやってきた事は部分的に活きていたという事は私達はちゃんと認識して世界に発信すべきだと思います。
地震が発生した時にあの地域を5編成の新幹線が時速200キロで走っていました。これが全部、地震を感知して緊急ブレーキが働き、止まるのです。だから、脱線事故を起こしておりません。もちろん、止まったのはいいけれども、その後の救済対策が不十分だったという苦情はあるようです。ここは変えていきましょう。

しかし、このような形で、緊急ブレーキが作動するというシステムは、やっぱり世界では大したものです。
仙台の家には今、都市ガスにはマイコンメーターというのがついているのだそうです。マイコンチップがついていて、それが地震のその余波みたいなのを感知して、全部止まったです。だから、火事はおこらなかった。阪神淡路大震災の時はすごく火事がおこったわけですけれども、今回はその教訓を活かして、だから、気がついてみると、あれだけの地震がらみで、いわゆる火事で家が焼けたのはほとんどない。気仙沼で大きな火事がありましたけれども、あれは津波でタンクが流されてそれに火がついて燃えた。都市ガスの火で燃えてはいなかったという事になります。これは、やはりすごい事だと思います。

ある町ではある地域では、スーパー防潮堤が作られて、どちらかというとコンクリートの象徴みたいに言われて、それが崩れて、という事で、なんであんな事をやったんだという事をマスコミが言ってます。しかし、それも私は違うと思います。決して、あれは十分ではなかったし、今後改良が必要だし、ああいうものだけでは、駄目だという事もよくわかりましたけれども、あの防潮堤の御蔭で、津波が来るのが6分遅れたという計算になります。その6分の間に逃げた方もたくさんいらっしゃる。そういう事もやはり、みていかなければいけないと思います。

今回、非常に大きな教訓がいくつかありますけれども、皆さんは地震がおこった時に、私も東京におりました。三田の自分の研究所長室におりましたけれども、物すごい揺れで、人生最大の地震になるなあという事でその途中で分かって、机の下に潜りこもうかと思った瞬間に地震はおさまっていったわけですけれども、とにかく外に出てください。建物に中にいる人は全員外に出て下さい。言う風に言われて慌てて、慶応大学の中庭に行きますともう人が溢れていて、私は家の事も気になりましたので、自分の車で慌てて帰ろうとしましたけれども、三田から東京駅まで車で1時間かかりました。
これはもう、帰宅難民の人が道路にあふれて出てて、中々、すごい東京でも光景だった。皆さんもそれなりの思いもあるし、いやもっと近い被災地で震災にあわれた方、ないしは、ご親族等々直接被害にあわれた方もいらっしゃるかと思います。皆さんは 安否確認をどのうようにしましたでしょうか。安否確認です。おそらく、電話は殆どつながらなかった。電話が通じなくて、けしからん、という思いがあるかもしれませんが、専門家に言わせるとそれでいいんだと。実は緊急回線を確保するために、電話の回線度95%減らしました。5%しか使えないようにした。だから使えません私達は。

しかし、その分緊急の電話はどこでもつながるシステムになっていた。これは95%減らすのがいいのか、90%減らすのがいいのか、それは議論の余地はあるかもしれないけれども、じゃあ、皆さんは何で安否を確認したのか。間違いなく、携帯のメールを使ったと思います。
インターネット、つまり、こういう現地の情報というのは大変有益なわけです。しかし、インターネット最大の弱点があるという事は前から知られています。それは電気です。電源がないと電気がないとインターネットが使えない。
私の知人は気仙沼とかにおりますと彼はインターネットが使えなかった。ところが携帯のメールが使えた。なぜならば、携帯には、バッテリーが入っているから。これは、改めてですけれども、すごい事が私達はわかったんです。今、私達はほとんど、数時間のバッテリーを個人一人ひとりが持っているという事です。当たり前のように聞こえるかもしれませんけれども、電気が使えなくなるという事でバッテリーが重要である事が改めてわかる。

実は、1995年の阪神淡路大震災ありましたが、ウィンドウズ95という言葉を皆さん覚えておられると思いますが、ちょうど95年ぐらいからインターネットが本格的に普及するんです。ちなみに95年の流行語大賞とった言葉の1つにインターネットという言葉がある。
阪神淡路大震災は95年1月ですから、まだ、阪神淡路大震災の時はそんなに普及していない。今回その意味では完全なインターネットエイジになって、初めての大震災だったと言える。このときにユニーバーサルサービスを提供する事が義務づけられている電話会社が携帯で携帯のメールをやってるサービスを行っているというは、すごく意味があったという事です。
ユニバーサルサービスですから、それぞれの地域で自家発電を持つ事を義務づけられいて、そして私達もバッテリーを持っていた。これはやはり世界に知らしむべき、重要な教訓なのだと思います。改めて、バッテリーってやっぱり必要だと。
この情報は、阪神淡路大震災の時もありました。自動車の中で、何も情報がない時に皆な、自動車の中で、そこにバッテリーがありますから、自動車の中でラジオを聞いて情報を得たわけですから。
今回、ご承知のように早くもいくつかの電気メーカーが100何十万とそれくらい高い値段になるそうですが、家庭用10時間くらい使えるバッテリーを売り出そうとしているんです。
すでに売られているわけです。こういう事も今回の震災を通じて、私達が少しづつ少しづつ、安全対策を強化していくプロセスなのかもしれません。

このインターネットの効果というのは、実は大変これからもいろいろあるわけですけれども、今回の1つの特徴で風評被害という言葉があります。風評被害、ま、とんでもない情報がいろいろ流れて、それを流したのは、ツイッターであり、インターネットである。これは間違いなく、1つの側面だと思います。
しかし、これもインターネットの専門家が分析しているわけでありますけれども。いい加減な情報網もツイッター等々、このインターネットの世界、いっぱい出る。しかし、同時にそれは間違っているという意見もいっぱい出る。これがある種1つの民主主義のメカニズムというか、市場のメカニズムというか、反対側の議論が必ず出てくるという意味で、これはこれとして、1つガバナンスとして、ワークしているのである、という見方もできるのかもしれません。
この点はもっともっと、さらにいろんな事をこれから経験していかなけばいけません。まあ1つの情報として申し上げていきたいと思います。

グローバルサプライチェーンと今後の復興需要

今回もう1つやはり震災の重要なテーマとなったのは、グローバルサプライチェーンの存在でした。先ほど言いましたように、一番有名になったのは、ルネッサンステクノロジーというマイコンを作っている会社なんですが、考えてみたら、そういうところが世界のシェアをかなりの部分を占めていて、日本の自動車メーカーだけではなく、GMのケンタッキーの工場が そういう影響を受けて止まる。身近なところでは、プラステックのボトルの容器のキャップがない。キャップがその地域で作られているので、それがないので生産が滞る。実は専門家の間では、これに関しても阪神淡路大震災がらみの中越地震等がありましたから、それにいろんな備えがなされておりました。

この分野の専門家のよく使う言葉でBCPという言葉があります。おそらく、皆さんの会社でBCPについて準備しておられるのではないでしょうか。ビジネスコンテニュティプラン、 BCPです。ビジネスコンテニュティです。
今回の非常に大きい教訓があったとすれば、次のような点だと思います。
アンケート調査によりますと、日本の大企業は半分以上、つねにこのビジネスコンテニュティプランを持っているかないしは検討中である。何かが取引先に起こった場合には、どのようにするかいう事のプランを一応、皆さんは考えつつあるわけです。それはいくつかやり方はありますけれども、工場、部品の供給もとを分散するというのも1つかもしれませんし、いざとなったら部品の仕様を要するにどのような内容なもの、どのうように作るかいう事を別の会社に渡してくれる。これは要するに下手をすると、談合みたいに受け止められるかもしれないし、ビジネスから、部品メイカーからみると 競争相手へノウハウを提供する事になりますので、大変進行は微妙で難しいんですが、それでも、中越地震などを踏まえて、日本メーカーはそういう事を進めていた。ところが今回わかった1つの事は私はメーカーであって、重要な部品をA社とB社に分けて、発注をするシステムはとったので、まあコンテュニティは保てるだろう、安心していた。
ところが、この部品を作るさらなる部品をA社もB社も同じにC社に依存していた。C社が倒れたので、結局、A社からもB社からも入ってこなくなった。つまり、皆さん自身が自分達の部品がたとえばどこから来ているのかという事を、フォローするのに、結果的にかなり時間が掛ってしまったという面があるという事です。
このビジネスコンテュニティプラン、ビジネスコミニュティマネージメントをいかに強化していくかという事が日本のある意味の国際競争力を高めていく、信頼を高めていく今後の重要な課題になるということは間違いないと思います。

経済産業省はこのグローバルプラン、サプライチェーンが今、どの程度復旧しているのか そして今後どういう見通しであるのか、言う事に関して緊急の聞き取り調査をおこなっております。サンプル数は80くらいであまり多くはないのですが、1つの傾向として、これが行われてた震災後が1カ月後の時点で60%はサプライチェ-ンがすでに復活しているというふうに答えています。60%。そして30%は夏くらいまでには何とかなるだろうと言う風に答えています。でも逆にいうと10%は秋以降もサプライチェーンまだ復活しないという可能性示している。これはもう夏までに90%回復するから大丈夫だという風にみるのか、いや秋以降も10%をまだかという風にみるのか、そこはただ単に主観も入るかもしれませんけれども、サプライチェーンの問題はやや尾を引くという風に私は考えていた方が良いと思います。

この点は先ほど、3.7%第1四半期で経済は落ちたという事を申し上げましたけれども、この後第2四半期も相当マイナスになるだろうという事を多くの人が予測している。しかし、同時にかなりのエコノミストは第3四半期以降、むしろV字型で経済は回復する可能性があるというわりと楽観的な予測をしている人が多いのですが、私はこのサプライチェーンの慣性が10%残るという事と、後から出てくる電力不足等という事で、V字型の回復という楽観的なを見方をなさらない方が良いかと思います。
この経済的困難と少し、長い目でつきあっていかなければいけない。しかし、その間に私達、先ほど言いましたように、TPP対応型の農業にするとか21世紀型のエコ管理するとか強いものを目指して、着々とやはり改革を進めていく。そういう時期にしなければならないと思います。