会長の部屋
CHAIRMAN'S ROOM
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沖縄音楽の解釈さまざま 月刊誌 「島へ。」 2002年1月号掲載
1、沖縄音楽と私の接点
2、「胆がなさ」節の勝手解釈
沖縄音楽にどっぷり漬かってしまっているが、そのキッカケは「りんけんバンド」演奏のメロディーが醸し出す、あの独特なリズムだったのかもしれない。
繰り返し繰り返し聞いているうちに、私の遺伝子のどこかに潜んでいたのか、沖縄リズムのDNAが呼覚ませられ、エイサー曲が流れ出すと、もう体が自然に動き出す。
コバルトブルーのあの海に魅せられ、何本も沖縄の海を潜るうちに、めったに使いもしないのに、離島に家まで買い込み、バブルと化してしまった。
その後、唄三線の世界にはまり込み、四六時中、家の中やら車の中やらでMDやCDが鳴りっ放しである。沖縄音楽の楽しさは、あの独特のリズムもさることながら、言葉の面白さにある。
面白いというより、英語より馴染みがないので、難解でその意味を知る楽しさ、にあるといってもよい。
沖縄では大変に有名な曲で、沖縄三線の世界に入り込んだ人の大部分が唄う曲に「胆がなさ節」という曲がある。
この唄の歌詞をまず紹介する。
(作詞者 とりみとり の原詩)
1、里がするかなさ 肌がなさかなさ
年重(かさ)び重び 胆(ちむ)ぬかなさ
胆(ちむ)がなさらやー思(う)みーかなさらや
2、胆(ちむ)や胆しちゅどう むてぃなしんさびる
誠胆(まくとうちむ)和胆(わちむ)里がままに
胆(ちむ)がなさらやー思(う)みーかなさらや
3、二人(たい)が情き花 花咲かす夜や
ゆくん胆(ちむ)がなさ まさてぃかなさ
胆(ちむ)がなさらやー思(う)みーかなさらや
4、世間(しけ)や走川ぬ 夢(いみ)ぬ間や やてぃん
互(たげ)に胆がなさ しちゅてぃ浮世
胆(ちむ)がなさらやー思(う)みーかなさらや
5、男生(いきがん)まりとてぃ 女生(いなぐん)まりとてぃ
かなさねんむぬや ただぬ葉(ふぁ)ガラー
胆(ちむ)がなさらやー思(う)みーかなさらや
沖縄の歌100選(p14)での泉知行氏の解釈によると、この歌の内容は
「人を裏切った苦しさがあり、人に裏切られた苦しさがあり、
「夢と希望を一杯膨らませて、
「人を愛したり愛されたりした昔があり、
「夢と希望も親しい人も財産も、
「全てを失って地獄を彷徨ったこともある。
「働いて働いて子供たちを育て上げた誇りもある。
「そして人の痛みを 知る人間になる。
「「胆がなさ」とは男と女の「愛」の事である。
このように解説されている。
また、琉球民謡解説集・中卷(滝原康盛著)の解説によると歌詞に対応した解釈は
1、彼氏がするかわいがりは肌の可愛いがりで
年を重ねる度に 心の可愛がりになる
心から可愛いでしょう 想いが可愛いでしょう
2、心は心をもって持てなしをするものだ
誠の心 私の心は 貴方の思うままに
心から可愛いでしょう 想いが可愛いでしょ
3、二人の情けの花を 花咲かす夜は
もっと心からの可愛がりで さらに可愛がるよ
心から可愛いでしょう 想いが可愛いでしょう
4、世間は走川の夢の間であっても
お互いに心で可愛がりあっての世の中である
心から可愛いでしょう 想いが可愛いでしょう
5、男に生まれても 女に生まれても
可愛がりの無い人は唯の枯葉の屑にすぎない
心から可愛いでしょう 想いが可愛いでしょう
3、「とし鍋」風勝手解釈(注・とし鍋は三線世界でのニックネーム)
胆がなさ節は、男と女の愛をテーマにした歌であるが、年齢を重ねるごとに、その愛のありようも変化するはずであり、また、また男と女の愛のテーマの部分と「性」をテーマにしている部分もあるはずである。
そこで私なりの解釈を試みるとする.
1、若かりしころの、貴方との夜の営みは、
がむしゃらだったけれど、年とともに、心から
愛の伴った営みに変わっていきました。
あの時の私って、本当に可愛かったでしょう
いい体してたでしょう
2、二人に誠意とほんとの愛あれば、私の心は
貴方の思うまま、………★★★∞∞∞
昨夜の夜も、貴方の為されるままでした。
そんな貴方が、ますます好きになります。
あの時の私って、本当に可愛いでしょう、
愛くるしいでしょう
3、一つ枕の、二人の夜は 夢見心地のエクスタシー
あの時の私って、本当に可愛いでしょう、
我を失った時の私って、どんなふう?
4、失意の二人の、あの時も 今となっては夢語り
二人の誠意が、すべてを変えた。
ねえ、今日の私って、本当に可愛かったでしょう
愛くるしかったでしょう。
5、人の情や、愛くるしさと、 心の痛みをしらないなんて
唯の枯れ葉と同なじだ
ねえ、今の私達って、本当に幸せでしょう。
二人の人生、エクスタシー
毎回繰り返される、
♪ 胆~がなさ~ら~や~ah
思(うみ~)かなさらや~ah ♪
の部分は以上のような感じで変化させて見た。
♪♪二人(たい)が情(な~さ~き~)花~
花咲かす夜や~♪♪
こんな気持ちは男には、永遠に 分からないかもしれない
沖縄らしい伸びやかなメロディと、深みのある言葉が、少しでもあなたのところへ伝わっただろうか。