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公認会計士試験制度のあり方

公認会計士清風会 羅針盤平成12年8月号原稿                                 


公認会計士試験制度のあり方

「公認会計士試験制度のあり方に関する論点整理」が本年6月29日に公表された(公認会計士審査会試験制度の関する小グループ)。 この「論点整理」に対し日本公認会計士協会は7月27日の理事会で「意見書」を審議し採択した。

1、公認会計士の供給不足

「論点整理」ではストックとしての公認会計士及び士補の資格取得者を現在の4倍(66、000人)程度必要といいまた、5年間で6000人増加させる必要があるともいっている。

新市場出現に伴う監査対象法人等の急増、金融機関等を始めとした監査日数の不足、今後の監査領域の拡大(地方公共団体監査の拡がり・独立行政法人・中間法人等々)を考えると、監査人不足は避けられない。これに対する私見は後述する。

2、監査証明業務、非従事公認会計士の必要性

「論点整理」では公認会計士の監査業務以外でのニーズの拡大から、企業や官公庁等に所属する会計専門家も必要という。これに対し公認会計士協会は「意見書」の中で、監査制度の担い手となることを前提とした試験制度であるので、最初から監査制度の担い手とならない社会人や他の専門家が当業界に流入しやすくする試験制度には反対している。つまり資格だけ保有の公認会計士の誕生に反対している。これに対する私見は後述する。

3、科目合格制の導入と質の確保

「論点整理」では会計学・商法についての一括合格を条件に選択科目についての科目合格を認めるべきという。これに対して公認会計士協会は「意見書」の中で「…選択科目の合格にも有効期限を設けることにより、受験者の能力の総合的な判断」は可能として、これに反対していない。質の充実については「論点整理」では、人数が増加することによって、公認会計士間の適正な競争が促進され、結果として全体の水準向上に資する、としている。これに対して公認会計士協会は「意見書」の中で、監査制度を担わない公認会計士は不要とのスタンスで反対し、かつ「一定の実務経験」や「米国公認会計士」、その他隣接業界からの「バイパス経由」合格者の増加は、不公平感を招くとしている。

その他「論点整理」では、資格登録と業務登録(ライセンス)を分けること、「ロースクール」に相当する「アカウンテイングスクール」の設置等々が触れられている。

4、現存の監査非従事公認会計士の利用とその他問題点等

監査業務に従事してない、あるいはそのウエイトの低い公認会計士は、全国で5~6千人あるいはそれ以上存在するはずである。これらを全員監査業務に従事させれば、供給不足はかなり解決するはずである。
そこで、監査業務従事希望の個人開業公認会計士の活用の方策を業界上げて考える必要がある。

しかし問題点も多い。その理由は、

①会計士の供給不足は、イコール補助者不足であるから、独立してすでに基盤を持った公認会計士にそれを求めるのは酷といえる。

②公認会計士としてのプライオリテイをもって、隣接業界(税理士業務・コンサルタント業務)で活躍している資格保有者は、採算の合わない日当的監査業務に戻りたくないのが現状といえる。

③必須科目合格者も今後、監査業務補助者として雇用されることになるが、監査法人内での科目合格者浪人があふれることが予測される。現状で拡大している「米国公認会計士」の監査補助者雇用よりは、ましなのか?

④当業界の入り口の門戸は広がるが、出口までの間に部分科目合格者があふれ、社会問題化しないか?

⑤税理士試験受験者が激減することも予測できるが、隣接の税理士業界との間で違った問題を発生させないか?

⑥協会は監査業務の担い手とならない公認会計士の増加に結びつくような試験制度改革は不要といっているが、公認会計士協会は平成11年の事業計画の中から「すべての会員が監査に関与し得るための施策」を削除し、「より多くの会員がそれぞれの特色を発揮した業務に関与し得るための施策」とわざわざ変化させている。

監査業務以外での活躍を自認した上で重要な事業計画を変更したのである。

監査業務に従事していない、公認会計士としてのプライオリテイをもって他業界で活躍している現会員の社会的貢献度合いは、当業界の別の意味での社会的使命が評価されなければならない。紙幅の関係で言いたいことが言い切れないが、常務理事としてではなく個人的見解を述べさせて頂いた。

なお筆者の全く個人的発言の背景を判断していただく上であえて、筆者の業務形態を付記させていただく。業務日数的には3分の1から40%が金融機関等も含めた監査業務。他の日数は税理士事務所の管理業務と相談業務や協会活動も含めての対外的活動。売上的には90%以上が監査業務以外の税務業務等となっている。

第14代清風会代表世話人 日本公認会計士協会経営担当常務理事