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先日、顧問先で決算報告をしていると社長様から「この法人税等調整額ってなんですか?」とご質問がありました。会計事務所の人間であれば聞き覚えのある言葉かもしれませんが、そうでなければ中々触れる機会はないと思います。今回はすごく簡単ではありますが税効果会計について記載したいと思います。
税効果会計とは会計上と税務上のズレを調整し、税金費用を適切に期間配分する手続きをいいます。
減価償却費を例とすると、減価償却費は税務上償却限度額があり、これを会計上の減価償却費が超過したとき税効果会計は適用されます。例えば、ある企業が車の減価償却を行うにあたり、車の使用頻度が通常よりも多いことから税務上の耐用年数よりも短い耐用年数で減価償却を行いました。このとき、税務上の減価償却限度額が2,000円のところ会計上は3,000円減価償却費を計上したとします。ここで会計上と税務上の税金計算でズレが生じます。
もし企業の売上が10,000円で費用が上記の減価償却費のみであった場合、会計上の利益は10,000円から3,000円を引いた7,000円。この7,000円に対し法人税等の税率30%として計算すると2,100円が会計上の法人税等となります。
これに対し税務上は売上10,000円から減価償却限度額の2,000円を引いた8,000円の利益に対し税率30%で計算しますから、2,400円が税務上の法人税等となります。実際に支払う法人税等ですが、企業内のルールで計算したものは認めらませんので税務上の2,400円を支払います。
ここで企業の財務諸表には7,000円の利益に対しての法人税等2,100円が記載されるべきところ、税務上計算された8,000円の利益に対する法人税等2,400円が計上されます。これでは本来の企業会計上の当期純利益が表示できなくなってしまうので、会計上の減価償却費3,000円と税務上の減価償却費2,000円との差額である1,000円に、法人税等の税率30%で計算した300円を財務諸表に計上された法人税等2,400円から法人税等調整額で300円マイナスすることによって、本来の会計上の法人税等が2,100円となり適正な企業会計上の当期純利益が表示できるようになります。
企業会計の大きな目的は企業の利害関係者に対し、財務諸表に基づき財務状況や経営成績を提供することにあります。そのため、税効果会計を適用することにより適正な利益を明示することは利害関係者にとって大きなメリットであるといえます。
東京本部 井上賢亮