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人間力

アテネオリンピックが始まった。
私の生活の一部に毎日のスポーツニュースが組み込まれるなんとも楽しみな時期である。
北島選手の水泳、やわらちゃんの柔道、松坂投手の4年間待ったリベンジなど興味深い競技が目白押しだが、私は男子サッカーに注目している。

男子サッカーは23歳以下の選手が中心であるが、アテネオリンピックを目標としてチームを立ち上げたときは他の世代と比べて実績がないため「谷間の世代」などと呼ばれ、当初はオリンピックの出場すら危ぶまれた。
「勝利に対する気迫が足りない。」
「技術はあるが、精神的に弱い。」
「リーダーシップをとれる選手がいない。」等の文句が当時のマスコミをにぎわせた。
しかし、日本はそれらの不安を払拭し最終予選で苦しみながらもアテネオリンピックの出場権を獲得した。
予選を勝ち抜いた選手は当然賞賛されるべきであるが、私は山本昌邦監督がいたからこそのオリンピック出場だったのではないかと思っている。

山本監督はレギュラーを作らないそうだ。レギュラーとは毎試合出場が保証させている選手のことを言うのではなく、毎試合出場した選手のことを結果的にそう呼ぶだけのことだと言い、選手の危機感を煽ったそうである。
当然同じポジションには何人もの候補選手がおり、練習から選手は真剣さを求められた。
ただ、選手間の競争を煽りチーム全体のレベルアップを図るという手法は目新しいものではなく、
他の大勢の指導者も取り入れているはずである。
私が山本監督に注目するのは、監督が口にする『人間力』という言葉にひかれたからだ。
国際試合では、試合会場だけでなく気候、宿舎、食事等の生活環境が日本と全く異なるところで行われ、その違いを乗り越えていかなければ勝利を手にすることができない。
それを実現させるのが選手個人の『人間力』だというのだ。
『人間力』とは状況への対応力の柔軟さ、あきらめない心、自分自身・仲間を信じる心、目標への強い意志等の精神的なものを言うのであろう。

この『人間力』はサッカーだけに必要なものではなく、私たちが生活していく上でも求められる人間にとって普遍的なものではないかと思う。
その『人間力』を養うことを主眼とした山本監督のチームがオリンピックでどんな活躍を見せてくれるのか。
結果が全てで言い訳がきかないスポーツの世界、「谷間の世代」が「黄金世代」となることを期待している。

(2004.8.12 M.O)